茜色の記憶
おじいちゃんの畑仕事を手伝いに、凪の家に行こうかとも思ったけれど、でもなんだかそんな気にもなれなくて、わたしたちはとりあえずわたしの家に戻った。
凪に麦茶を出し、テレビをつけて、普段なら見れない情報番組をなんとはなしに見る。

でもわたしも凪も、テレビの内容なんて全然頭に入って来なかった。

ゆきさんはあの手紙を読んでどう思うんだろう。

読んでよかったと思ってくれるかな。どうしてこんなもの読んでしまったんだろうと思うかな。

本来だったら届かなかったはずの手紙。
届いたのは神様の差し金なのか、単なるわたしたちのお節介なのか。
もし貸したら、届かない方がよかった手紙にわたしたちが余計なことをして、ゆきさんの人生をおかしな方向に歪めてしまったらどうしよう……。

そんなことをぼんやり考えていたら、情報番組はエンディングを迎えていた。
時計は十一時半をさしている。

「午前中の配達って、何時だっけ」

凪が聞いてきた。

「場所にもよると思うけど、うちは十時半くらいかな」

「『山と海のマルシェ』への配達はもう終わったかなあ」

それはわたしも考えていた。

「多分、配達は終わってるよね。でも、仕事中だろうし、読むのは仕事終わってからかもしれないし……」

「そっか……、そうだよね」

気まずい沈黙が再びやって来た。

「ちょっと様子見に行く?」

わたしが小さい声で誘うと、途端に凪の顔がうれしそうに輝いた。

「行こう!」
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