茜色の記憶
わたしたちは買い物客のようなふりをして、『山と海のマルシェ』の直売所をのぞいてみた。
商品を探すふりをして、ゆきさんがいないか探す。
しかし、直売所の中にはゆきさんらしき人はいなかった。

「休憩中かな……」

「お昼時だもんね、ありえるよね」

わたしたちはスタッフの出入り口の方を回ってみた。しかし、それらしき人はいない。

「あ」

きょろきょろしていた凪が、声をあげた。

わたしが振り返ると、泣きはらしたのか目を赤くしたゆきさんが立っていた。

お昼休憩中のゆきさんは、自分の車の中で元旦那さんからの手紙を読んだらしい。
言われるままにフードコートについて行き、買ってもらったジュースを飲みながら、まだ目が赤いゆきさんを盗み見た。
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