さくら、舞う。ふわり
「おあっ、ひでえ。俺めちゃマジで心配してんのに、笑うとか地味に傷つくんすけど」
「ぷふっ……ふふ、ご、ごめんなさ……う、ふふ……っ」
絶妙な距離感を保ちながら、ぶつぶつと言い訳をする変なひと。私が彼に抱いた第一印象はまさにそれで、とどめに頭をかきながら首をかしげる絵面に、とんでもない変化球を食らってしまう。
いつ以来だろうか、こんなにも腹の底から笑ったのは。懐旧できるほどの想い出もないので何とも言えないけど、久しく笑うなんてことを忘れていたのは確か。
「落ち着いた?」
彼が持参したレジャーシートに座り、その後も少しのあいだ、笑いのツボから抜け出せずにいた。やっとのことで這い上がった私に、彼が半ば呆れたように声をかけてくる。
「うん。ごめんね、いきなり笑ったりなんてして。心配してくれたのに、私それが可笑しくって」
「つかもう笑うのなしっすよ? 俺マジでへこむから」
そう話す彼の表情がまた何とも言えず、鳴りをひそめた笑いの発作が再燃しかける。それをうつむき息を止め必死で堪えると、小さく「うん」と返事をした。
「それで、さっきは何をしてたんすか?」
うつむき顔を隠しているせいか、笑いを堪えていることはバレなかったみたい。彼はなぜ私があの場に立っていたのか、その訳が知りたくて仕方がないらしい。