さくら、舞う。ふわり
「幽霊!?」
「ちょ、声でけえって。どっかに潜んでるバカップルが、今ごろビビりまくってんぞ」
「ご、ごめん。でも幽霊だなんて、そんなこと聞いたらふつう出るでしょ、大声」
「いや、出ねえっすよ」
彼の話を聞いて、よくよく辺りを見渡してみると、なるほど愛を育むには最適な環境かもって、変に納得してしまった。
それに今のご時世、市も恋人も財政難で、削ったしわ寄せがここへ集まるのかも。けどそれは生きた人間の話であって、もうひとつの理由には当てはまらない。
超常現象に対し批判的って訳ではないけど、それでも今いる場所が幽霊のたまり場だなんて聞かされて、はいそうですかと納得できるはずもない。
未だすっきりしない私は、彼にもう少しつっ込んだ質問をする。
「その幽霊って、この場所で誰か死んだひと? 近くに霊園とかないよね。でもそんな噂、私聞いたことないよ。だって私、学区は違うけど同じ地区に住んでるし――……って、そういや名前」
出逢いからインパクトがあり過ぎて、まだ自己紹介をしてないことに気づく。
私が笑ってるあいだ、彼はトートバッグからレジャーシートを取り出し、それをひくと私を座らせてくれた。初対面なのに甲斐甲斐しい彼に、知らず積年の友的な態度を取っていた。
なんて無神経な子だって、内心呆れられてるかも知れない。急ぎ居住いを正すと、今更ながらに私は自己紹介を始める。