天使の攻略法
「どう?」
演奏が終わると、弾いていた本人とは思えないような軽さで感想を聞いてくる。
「さすがだな。迫力ありすぎて汗出てきちゃったよ。」
正直にそう言うと、翔は照れかくしに頭をポリポリかいている。
熱くて、換気をしようと窓の方を見ると、こちらを覗いている人影が見えた。
誰だ?と思って窓を開けると、スケッチブックに絵を描いてる少女が立っていた。
「どうしたんだよ…」
不審に思った翔がこっちに来た瞬間に目を見開く。
「『美術室の天使』…」
え?こいつが?
パチっとしたまつ毛。ぷるんとした唇。
そして、黄色っぽい眼とクリーム色の肩にかかるほどの髪の毛。
まさに、天使のようだった。
俺らが呆然と彼女を見つめる中、当の本人は、俺らを無視して鉛筆を動かし続けている。
神秘的、ミステリアス。
そんな言葉がふさわしい。
なにか近寄り難い雰囲気を醸し出している。
これが、『美術室の天使』か…。