天使の攻略法
『パチパチパチ』
弾き終わって、世界の余韻に浸っていると後ろから拍手が聞こえる。
「翔か…。ビックリさせんなよ」
「流石、ピアノ部門の主席さんだな。」
「嫌味かよ」
「褒めてんだよ。今回もどっぷり世界に入り込んでたな。」
俺のピアノではまだ周りの人まで世界に誘い込むことが出来ない。
俺は世界中のみんなを音楽の世界に誘い込むことが目標だ。
「ちょっと貸せよ。」
ピアノの前の椅子から退かされる。
翔は肩を回してから深呼吸をする。
少しの沈黙のあと、すぐに迫力のある音色が響く。
翔のピアノは情熱的。俺にはない迫力と、情熱と、繊細さが入り混じっている。
俺は、翔のピアノが、大好きだ。
火を噴くような迫力に、俺は思わず汗をたらす。