ラブ・マスター? 【ラブレッスン番外編】
『乗らないの?』





部長の声で我に返る。そんな感じだった。動揺してるなんて悟られたくなくて、急いで笑みを浮かべる。





「乗ります。けど…お邪魔じゃなかったですか?」





押されていなかった1階のボタンを押しながら様子を伺った。




止まったままのエレベーター内に、一体いつからいた?





あんなにくっついて2人で何の話を?




『いや。構わないよ。僕らも帰るところだったから。』





答えた部長の表情は昨日喫煙室で見せてた表情とはまるで違って見えた。



あの時は、挑むような視線。俺に対する敵対心。
そんな言葉がピッタリくるような表情だったのに。



今は、俺よりも優位に立ってる者の表情に見える。



俺が密室で何があったのかとヤキモキしているって気付いてるんだ。



くそっ。



マジで何があったんだ?



どうしてそんな余裕のある表情をしている?



由宇さんはどうしてそんなに困った顔をしているの?










ぐぅ〜





頭の中で色々と考えていると、なんだか間の抜けた音が聞こえてきた。




なんだ?今の音。由宇さんを見ると、お腹に手を当てて真っ赤になっている。




『あのっ!お昼食べるの忘れててっ…すみません』




俯きながら言う由宇さんに、愛しさを感じる。




何だか張り詰めた空気が一瞬でなくなったのを感じた。




そんなに忙しく働いてたんだ。


















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