人狼 セブンティーン
1夜目

1夜目【朝】



「輝ぁ!!」


おそらく友達であっただろう人の悲鳴が聞こえる。
「輝……マジかよ……」
髪を金色に染め、左サイドを編み込んでいる、少し怖めな男子が残念そうに下を俯く。
「みなさん。そろそろ、始めませんか?」
「始めるって何をだよ!?」
進めようと声をかけたメガネの男子に、さっきの金髪が突っかかる。メガネ男子はひるむこともなく、話を続ける。
「人狼をです。まず、ざっと自己紹介から行きましょう。話し合いはそれからです」
「だから、こんなゲーム何でやんなきゃ、いけねぇんだよ!!」
「僕はやったほうがいいと思うよ〜?」
メガネ男子に再び突っかかる金髪男子に言い返したのは、メガネ男子ではなく薄いピンク色に髪の染まった暗そうな男子だった。
「あ?」
もちろん、突っかかる金髪男子を睨みつける暗そうな男子。
「部屋見れば分かるでしょ。窓もないしまず、転送なんてできるぎじゅつがあるんだ。やらないと、ここからは出れなそうだよ」
「…………くそ」
いじけるように、下を俯いた金髪男子をメガネ男子は確認し、口を再び開きだす。
「じゃあ、自己紹介から行きますよ。僕は、水野(みずの) 正樹(まさき)。よろしくお願いします」
「………俺?」
横に座っていた、いかにもアホそうな男子が、水野に見つめられ声を上げる。
「俺は、垣根(かきね) 総司(そうじ)。ハイ次!」
「あ、僕は桃山(ももやま) 輝羅(きら)…」
垣根が、声を掛けて、横を見るとすぐに反応して、桃山は答えた。桃山は、さっき水野と、金髪の間に割り込んだ、薄ピンク髪の暗そうな男子だ。
「わ、私は彩乃(あやの) 才華(さいか)」
ミディアムヘアーの女の子が笑顔で続ける。
「俺は、灰原(はいばら) 朝日(あさひ)!よろしく!」
待ってました!と言わんばかりに、胸を張って灰原は答えた。灰原はみんなと違って、相当楽しそうにしている。髪もしっかりセットしていなくて、少しだらし無さも見える。
「うちは紺野(こんの) 真希(まき)。よろしく」
綺麗な茶色の長い髪を弄りながら、紺野は答える。どこか、心配なそう気持ちも顔から、滲み出ていた。
「橙咲(とうざき) 灯(あかり)って言います!お願いします!」
ポニーテールの、可愛い女の子がペコリと、お辞儀する。橙咲は、少し前から緊張した顔をしていた。おそらく、そろそろ来る自分の番を心配していたのだろう。
「金沢(かなざわ) 風雅(ふうが)」
さっきの金髪が少し悔しそうに呟く。さっきの一連の口喧嘩に負けて、悔しいのだろう。
「紫(むらさき) 楓(かえで)。よろしく」
ショートヘアーの紫は、少し気だるそうに言い放つ。茶髪のショートの髪型、それと右端に紫色の長い1束の髪。オシャレに興味なさそうだが、そこそこオシャレである。
「あ?俺かよ。茶津野(ちゃつの) 広大(こうだい)。うぜぇな」
金沢と少しキャラ被りな茶髪男子、茶津野。面倒くささを顔いっぱいに、滲み出している。
「黒帯(くろお) 大河(たいが)って言います」
少し適当に、答えた黒帯は頭をポリポリと掻いて、次の人の方に目を移す。
「青山(あおやま) 桜(さくら)よ。はい。終わり」
赤縁のメガネを指で押し付けながら、答える青山。赤縁メガネに、長髪。喋り方と、少し委員長系女子を想像させる。
「黄田(きだ) 愛花(まなか)っていいます!」
ツインテールの黄田は、笑顔で答え皆に手を振る。それを冷たい目で青山は睨んでいた。
「あっ私、縁堂(えんどう) 麻美(あさみ)」
綺麗な茶髪を揺らして微笑む縁堂。やっぱり可愛いなぁ。赤金は、縁堂を眺めながら人狼の事をすっかり忘れていた。
「僕は白井(しらい) 湊(そう)。よろしく」
………白井にはノーコメントにしておこう。赤金は心の中で白井をそっと、押しのける。
「あっ。赤金(あかがね) 真白(ましろ)です」
赤金も簡単に自己紹介を終え、水野に目線を写す。
「では、話し合いを始めるよ。どうやら、この人狼は朝のフェイズと夕方のフェイズの、二回の話し合いがあるようだ。つまりどういう事か分かるかい?」
水野は「待っていました!」と言わんばかりに袖をめくり話し始めた。
みんな何となく、分かっているのか頷いていたり、無言でいたりしていた。唯一赤金だけが「どういう事だ?」と呟く。
「つまり、朝に追放者を決めなくていいんだ。投票は夕方だからね」
…あぁ。って…ん?
きっと赤金はまだ分かっていないのだろう。顔は変わらず曇っている。
「と!言うことで。話し合いを始めます。1日目の占いは禁止だったと思うので、話す事は少ないですが、いくつかの役職ならカミングアウトできるんじゃないでしょうか?狩人もいる事ですし」
あれ?カミングアウトって役職言うのか?
やはり、赤金は何も分かっていなかった。
「わ、私!占い師です!」
急なカミングアウトに皆、彩乃の方を見る。
「ちょっおい待てよ!その占い師っての?俺なんだけど!何行ってんんだよ、てめぇ!」
彩乃のカミングアウトに、垣根が噛み付く。
「何行ってるの?垣根くん。私は本当に占い師だって!」
「あぁ?その占い師ってのなんだかよくわからねぇけど、俺だよ!」
「うっせぇ!てめぇら叫ぶんじゃねぇよ!もう少し静かに話せぇ!!」
言い争いを始めた、彩乃と垣根の間に入ったのは、キレ気味の茶津野だった。
「てめぇも、ウルセェだろうがぁ!!!」
さらに火に油を注ぐように、金沢も入ってくる。これはもう止まりそうにない。火種だった垣根も、2人に少し怯え静かになってしまう。もちろんそれは、彩乃も同じだった。
これでは、誰と誰の争いだったか分からない。
「静かにしてください!!これでは、夕方誰に投票していいのか、分かりません!!みなさ…」

『しゅーりょー!!!』

司会者であろう男の子の声が響き渡る。
その声を聞くと同時に気づくと先程の待機部屋にいた。
< 3 / 3 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

あの双子に恋しては、いけない

総文字数/6,081

恋愛(学園)18ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop