零度の華 Ⅱ
あたしは藤沢に鎌をかけたということだ
藤沢の警察手帳はあたしの胸ポケットの中に潜んでいる
「まさか、こんなに上手くいくとは思いませんでした」
あたしが計画を狂わせるわけないだろう
2手も3手も用意して、最終的な結果に持ち込む
「それにしても、零(ゼロ)様が女だったなんて......」
あたしは扉へ向かい取手の部分に南京錠をつければ、不思議そうにあたしを見てくる
十分に玩具で遊んだら、片付けないとな
あたしは近くにいた奴等を短刀で殺した
悲鳴が響き渡り、あたしから逃げようと必死になっている
こういう時に銃がいいだろうけど、音が聞こえたら意味がない
あたしは逃げる奴を残すことなく殺す
殺している途中に救急車のサイレンが聞こえてきた
アイツも死んだか
注射器に入っていた中身は毒
時間差で効果を発揮する特殊なもの
教会の辺り一帯は血で汚されている
『殺人鬼と呼ばれるあたしに光を求め、完全な世界にする?それも、犯罪のない世界にか?』
鬼の面を横にズラして死体が転がる教会を見渡す
『光なんざ住みにくい。あたしは元々闇の住人だ。理想や思想を膨らませて、自惚れてんじゃねぇ。この世界はあたしがいる限り、変わらない』
あたしの声は誰かに受け取られることなく、教会にやけに響いた
最後にステンドガラスの女神を見ると妖艶に笑っている
フッと鼻で笑った後、鍵を取り出し南京錠を取手から外す
胸ポケットにあった藤沢の警察手帳を教会に放り投げて、零(ゼロ)のカードを扉前にそっと置いておく
そして、あたしはこの場を去った