零度の華 Ⅱ

『お父さん、好き?』



そう聞けば、無邪気な笑顔でうんと元気よく答えた


その後にはシュンと悲しい表情を見せる





「もう、パパはいない。僕、パパみたいに強くなって悪い奴を捕まえるんだ!」






力強い目に、幼いながらにも決意を感じる言葉



園児が小さいながらに思い描く理想が、父親の姿か





あたしは男の子の頭を撫でてこう言う





『大きくなって、悪い奴がいない世界にしてね』





男の子から目線を外し、母親に頭を下げてその場を去った


眠っている藤沢の顔の横に、そっと1輪の菊の花を添えて





そんな世界が訪れる日があるのなら、あたしも見てみたいもんだ



いや、その時にはいないだろうな





あたしは、今、ここにいる


地面にしっかりと足を付けて、歩いている




あたしがこの世界にいる限り、この世界のモノはあたしの玩具だ







< 187 / 420 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop