零度の華 Ⅱ
『お父さん、好き?』
そう聞けば、無邪気な笑顔でうんと元気よく答えた
その後にはシュンと悲しい表情を見せる
「もう、パパはいない。僕、パパみたいに強くなって悪い奴を捕まえるんだ!」
力強い目に、幼いながらにも決意を感じる言葉
園児が小さいながらに思い描く理想が、父親の姿か
あたしは男の子の頭を撫でてこう言う
『大きくなって、悪い奴がいない世界にしてね』
男の子から目線を外し、母親に頭を下げてその場を去った
眠っている藤沢の顔の横に、そっと1輪の菊の花を添えて
そんな世界が訪れる日があるのなら、あたしも見てみたいもんだ
いや、その時にはいないだろうな
あたしは、今、ここにいる
地面にしっかりと足を付けて、歩いている
あたしがこの世界にいる限り、この世界のモノはあたしの玩具だ