零度の華 Ⅱ
「もしもし」
『あたしだ』
「お久しぶりですね。どうでしたか?牢屋の中は」
受話器の向こうで笑っているのが分かる
長話に付き合う時間があたしにはない
それに、話なら家に帰ってからでもできる
『話は後だ。至急、××公園に来い。あたしの部屋の引き出しの中に黒の携帯電話があるから持って来てくれ。顔を隠すように帽子にサングラスはしてこいよ。それで、』
「注文が多いですね」
『いいから聞け。絶対に電話を掛けるなよ』
「携帯電話に、ですか?」
『あぁ、そうだ。じゃあ、待っている』
鞄にチラリと目をやる
ここまで盗聴はできやしない
声は潜めたつもりだからな
公園のベンチで待つこと5分
亜紀が車に乗ってきた
今のところ気配は感じられないので、警察はあたしをつけてきてはいないな
亜紀はあたしのもとへ向かってくるので盗聴器のこともあり、亜紀に声を出さなぬように自分の口元に人差し指を立てる