零度の華 Ⅱ
「飛ぶのはいつですか?」
『明後日』
「そうですか」
亜紀の手は雑誌へと触れた
ただそれだけかよ、と悪態を付きながらパソコンに目を向けてメールを送る
送信が完了すれば、あたしは自室へ入り飛ぶための荷物を準備しておく
『アイツに連絡し忘れた』
携帯電話を取り出し、ある人物に電話をかける
「もしもし」
『久しぶりだな。鼠(マウス)』
「その呼び方は止めろって言っているだろうが。僕は弥生(ヤヨイ)だ」
『はいはい、分かった。仕事だ』
「まさか、ハードな仕事じゃないだろうな」
『そのまさかだ』
マジかよと項垂れる様子が浮かぶ
鼠(マウス)は旧名で今は弥生という名で運び屋をやっている
本名は関根貴史‐セキネタカシ‐
あたしの専属とまではいかないが、1番の顧客で報酬もいいため、あたしに仕えることが多い
前回、外国へ行った時の運び屋もコイツだ