零度の華 Ⅱ


本心は妬み、嫌い、恨むといった感情が巡り、結果あたしのような者に頼むか自ら殺すかというのが人間だ

中には違う奴がいるのは確かだが、黒い感情を持たない奴などいない



『人間のことを理解しようとすればするほど、溝に(はま)るだけだ。それなら、一生知らなくていい』


あたしの仕事は人を殺すこと

殺しを依頼する人間の感情や殺される人間の感情なんて、どうでもいい


気にするだけ無駄なことだから


「お前、深く人に触れたくないんじゃなくて、本当は触れることを恐れているんじゃないのか?」


『は?』


「自分が壊れることを恐れているから、触れないようにしているだけだろ」



コイツ、あたしのとこを知った物言いをしやがる

あたしが恐怖を抱いているだって?

んなことあるかよ


何故、あたしが人間を知ることに、自分が壊れることに恐れを抱かなくてはいけないんだ



『くだらない。そんなことであたしが恐怖なんて抱くわけないだろ。あたしが壊れることなどない』



あたしは鞘にしまっていた短刀を抜き、刀に橘を映す

これ以上、無駄な話をして時間を使うことが勿体無い


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