零度の華 Ⅱ


『さようなら』



橘に向かって一直線に短刀を突き刺そうとすると、橘の懐から銃が取り出され、あたしを目掛けて発砲する


バーンと大きな音とともにガラスが割れる音が部屋に鳴り響く


橘ヒロが撃った弾はあたしの頬を掠めただけで、あたしの短刀は橘ヒロの心臓を刺した



思いっきり引き抜くと血が飛散するからゆっくりと刀を抜き、返り血を浴びないようにする

ガラスが割れたことで、望は更に泣き声をあげる


それに眉を寄せ、眉間に皺を作る亜紀



あたしは短刀に付いた血を畳んで置いてあるタオルでふき取り、鞘に収めると望を抱き上げ宥める


そして、ポケットから零(ゼロ)のカードを取り出しベットの上にのせた



『行くぞ』



亜紀に一言言い、一歩足を踏み出そうとふらつき倒れそうになる



「随分お疲れのようですね」


『煩い』



あたし達は歩みを進め、車へと乗り込む



「それで、その赤ん坊はどうするんですか?」


車を発進させずに運転席から助手席のあたしを見る

泣き疲れ眠っている望の服を着替えさせるあたしは一度手を止め、携帯電話を取り出して画面を亜紀に見せた



「ここの住所へ行けということですか?」


『あぁ』


「分かりました」


亜紀は車のエンジンをかけて車を動かした



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