零度の華 Ⅱ


「誰だ」


あたしに向けられた第一声がこれとは酷いな

あたしと話したことのある組員だというのに、忘れているのか


『雨月羽空ですよ。雨に濡れた時に銀夜さんに連れられて、御一緒にお食事をさせてもらった雨月です』



これだけ詳しく言って知らないと言われるのであれば諦めるつもりでいたが、どうやら思い出したようで笑顔を見せ梟銀夜を呼ぼうとしたので止めた

そして、代わりに梟銀夜の母親であるローズを呼ぶように頼んだ


中に入るように促されたが断り、玄関で待つ

数分するとローズがあたしの前に現れる



「久しぶりね、羽空ちゃん!もしかして、その子は羽空ちゃんの子?」



ローズの目に映るのはあたしに抱きかかえられている赤ん坊の望



『ローズさん、お久しぶりです。この子、抱いてもらえませんか?』


ローズの質問に答えず、望を抱いてもらうと先程の紙を渡して走って車の中に乗り込む



『発進させろ』



車に乗り込み前にローズがあたしの名を呼んでいた声は耳に届いていたが、そんなことで立ち止まり振り返ることなどしない


数分車を走らせたところで亜紀が口を開いた



「随分と強引でしたね」


『話、なんて、してられるか。それより、も、早く......』



無理をしたせいであたしはそこで気を失ってしまった

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