零度の華 Ⅱ
拿~一歩を踏み出す足跡~
目を覚ませば見えるのは灰色をした天井
自分が横になって寝ていると把握するのに時間は掛からなかった
あたしは自分で刺した左手を天井へと伸ばすと、その手には綺麗に包帯が巻かれてある
「目が覚めましたか」
少し離れたところに座っている亜紀
『ここはどこだ?』
「私の知り合いの医者のところですよ。もう少し遅ければその手、切断するところでしたよ」
そんなに酷かったのか
何も考えずに刺してしまったことが原因だな
もう一度、手に巻かれた包帯を見て、手を下ろした
『どれだけ寝ていた?』
「4時間程でしょうか」
『今、何時だ』
「午後9時半です」
1日と時間が経っていないことに安心する
1日も時間を無駄になんてしたくないからな
そういえば、MIUNIT(ミニュイ)を潰した後からアレの日がパタリとなくなった
アレの日とは新月になると1日中眠りにつくという、原因不明の状態に陥ることだ
今まで、体に何の影響がなかったから気にしていなかった
特に異常は見られないから気にしなくてもいいか