零度の華 Ⅱ
『ここのパンケーキ、おいしいな』
「あ、良かったです。あなた様と来れて嬉しいです」
菖蒲(アイリス)は切なそうな表情を見せる
『あなた様じゃねぇ。アオだ。時間が許すまで今日は付き合ってやる』
「え、でも......」
人差し指を立て、菖蒲(アイリス)の口元に当てる
口の動きが止まると、その指を自分の口元に当てて片目を瞑り、笑顔を向ける
『シーッ』
あたしの姿に菖蒲(アイリス)だけではなく、周りの客も頬をほのかに赤く染めていく
あたしは、そんなこと気に留めずに言葉を続けた
『俺のことなら大丈夫だから、な?』
「はい!」
その後、パンケーキを食べ終わり表の世界で時を過ごす
普段、あたし達はこんな風に遊ぶということはしない
だから菖蒲(アイリス)の表情は、これから待ち受ける現実が消えてなくなるような、今の眩しい太陽のような表情をしていた