春はすぐそこ。
雨は激しく降ってはいないものの、服は十分に濡れてしまうぐらいの量は降っている

浴衣、濡れちゃった、
どうしよう

一度家に帰るしかなかった
家といっていいのかわからないが…

今の私にどこにも居場所がないのは明らかだった

学校も、アルバイト先も、自分の力で手に入れたものではない

「早く、大人になりたい。」

やっと駅が見えてきた頃だった

大きな音楽を流した車が私の真横で止まり、中から女性が出てきた

「待ちなさいよ!!」

ヨシカズ君の母親だった

なんでまた…

運転席には目つきの悪い男が一人、こちらをみている

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