春はすぐそこ。

「高校生が最近はよく来てくれるんだ。」

「そうなん…ですね、、、」

「君も同じ理由かな?」

ぱちっと目が合った。
なんだか情けなくて恥ずかしい気持ちになる。

「すみません。そうです。」

「特にお金に困ってるようにも見えないけど、どうして?」

「…。今のうちから貯めておけば、早く家を出れるから…です、」

「ふうん。家を出たいの?」

「そうですね…。とても居づらくて。」

ぽろりと本音が出てくる。

「そうか。じゃあ明日からもここに来るかい?」

「え?」

「貯金をしたいのに申し訳ないけど、そこまで高いお金は出せない。だけど人出は欲しいと思っていたんだ。」

「でも…あの、私話すの苦手だから…」

「おや、残念だ。募集して以来初めての合格者なのに。」

「…やらせてください。」

「そうこなくちゃね。さぁ今日は遅いからそれを飲んだら帰りなさい。明日また待っているよ。」

連絡先だけ伝えて、お店を後にした。

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