春はすぐそこ。
古川一家は穏やかだった。
お姉さんの桃さん。大学四年生でたまたま実家に帰ってきていたのとのこと。
お母さん、お父さんは古川とはまったく似ていないほどの優しさ。
お母さんは料理がとても上手だった。
「おふくろ…国籍全然違う料理じゃねーか。」
「いいじゃなーい。頑張ったのよ?」
「由紀、リリーの散歩はどうするんだ?」
「後で行くから。」
リリーとは、きっと、今私の足元に寝ている大型犬のことであろう。
かわいい…。
「犬嫌いか?」
「ぜんぜん。」
むしろ触りたいぐらいだ。