春はすぐそこ。
「後で散歩行くから来いよ。」
「あ、うん、」
ついでに帰ればいいかな、
「そのまま帰らせねぇよ?」
読まれていた。
「リリー行くぞ。」
のそりと起き上がってリリーは自ら壁に掛けてあったリードをくわえて古川の元へ歩いてきた。
「賢い子なんだね、」
「リリーは頭いいからな。なんでも覚える。」
普段は絶対見せない顔でリリーの頭を古川は撫でる。
そういう顔もするんだ。
この時、そんなことを思っていた。