春はすぐそこ。
「待たせたな。」

「別に。」

「こんな早い時間からどうした。なんかあったか。」

「…、なにも。」

「嘘つくな。わかりやすいな。何があった。」

「…何もないって。」

「わかった。今は聞かない。話したくないならいつでもいい、お前が話したいときに話せ。行くぞ。」

いつもは鬱陶しい古川との会話が今日は少し居心地よく感じるのは私が自分勝手な証拠だ。

古川に手を引かれて、それでも私は黙ってついて行った。
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