春はすぐそこ。

気を取り直して古川の元まで向かったのだが、

「いない…」

また誰か懐かしい人とでもあったのだろうか

近くをうろついてみる、

「由紀ちゃんこそ、変わってないね、」

そんな言葉が聞こえてきた

少し高めの女の子らしい声

「いつ帰ってきたんだ?」

「最近だよ、ずっと会いたかったんだよ。」

女の子はそう言って古川に抱きついた

アルバムにいたあの子に間違いない

メガネとおさげはしていないものの、あの身長と笑い方は間違えない

先ほどと同じモヤモヤが黒く、重く、広がる

黙ってその場を後にするしかなかった
< 97 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop