僕らは君を。
ピクニック日和
太陽が高く昇っている。
7月に入り、だいぶ夏を感じる季節になった。
ようやく仕事もひと段落し、お昼休みの時間だ。
いつもは自分でお弁当を作ってきているのだが、あいにく今朝は寝坊したため 店で買おうと、オフィスから徒歩十分程度のコンビニへ向かった。
「定番のたまごサンド…ハムサンドも捨てがたい…」
と迷っていると、横にいた女の子達が何やら嬉しそうに話している。周りにはお花畑が広がっているようにも見える。
「さっきすれ違った人って、絶対"ユキ"だよね〜!」
「ユキって、最近密かに人気になってきてるモデルの?」
ーユキ。懐かしいな…
「そうそう!帽子かぶってメガネつけてたけど、オーラが隠せてなかったわ」
「えー、声かければよかったね〜!」
きっと彼女達が話している人は今日、会社に来る予定のモデルのことだろう。
そんなことより今はどちらのサンドイッチを選ぶのかが私にとっては重要である。
結局、私にとって定番のたまごサンドを手に取り、レジで支払い、オフィスへ戻ろうーーと思ったのだが 今日はピクニックへ出かけたくなるほどの清々しい晴天だ。すぐ近くにある公園のベンチで食べるのもたまには悪くない。今日は公園で食べよう。
ベンチには木漏れ日が差し込み、優しくそよ風が吹いている。
朝からなにも口にしていない私は、サンドイッチに大きくかぶりついた。指と口についたマヨネーズをぺろりと舐める。
美味しい。これで午後からも頑張れる。
そう思った時、二つ隣のベンチに一人の男性が座った。
少し細身で、帽子をかぶり、メガネをかけている。あまりじろじろと見てはいけないと思いつつも、彼を横目で見てしまう。
「きっと、今日会社に来る予定で、さっきあの人達が話してた、最近密かに人気の、あのモデルさん…だよね…」
もちろん声をかける勇気なんてないし、話をする時間もない。今気づいたばかりではあるが、そろそろオフィスへ戻らなくてはならない時間なのだ。
サンドイッチをもっと早く決めていれば… そう後悔しながら、たまごサンドを飲み込んで、やや駆け足で戻って行った。
彼の視線にも気づくことなく。