ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。
彼は、自分のことより周りのことを考えるような優しさを持ち合わせているのだ。

私立は校舎もきれいだし、先生の数も充実している。
でもその分お金はかかる。

それに、おそらく声をかけてもらえなかったのが相当悔しくて、他の高校で見返してやると思ったに違いない。

彼はものすごく負けず嫌いだから。



大河と本山くんは、学校に着くと部室に直行する。
そして私も更衣室で着替えをしてグラウンドに向かった。


朝練はまずランニングから。

大河は足も速く、先輩たちに遅れることなくついていく。
一方本山くんは、三週目あたりからじりじりと遅れ始め、次第に集団との間が離れていく。


私はその間、先輩マネージャーたちと一緒に汚れたボールを磨いて、練習の準備をしていた。


「先輩、ちょっと行ってきていいですか?」

「うん、いいけど……そんなことまでしなくてもいいよ?」


二年の綾子(あやこ)先輩はそう言うけど、私は本山くんのところに駆け寄った。
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