ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。
ここが旭日の選手とは違う。

旭日の選手には自信がない。
だからヒットが出るのは��ラッキー”で、狙ったヒットなんてない。


この自信は……やっぱり練習の証なのかもしれない。

誰にも負けない練習ができたという自覚があれば、自分を信じられるのかも。


「もらった」


ピッチャーの手からボールが離れ、真田くんがそう言った瞬間、四番バッターは甘いコースに入ったストレートを見事に打ち返し、本当にボールがスタンドに吸い込まれていった。


「キャー、すごい!」


ボールの行方を見守っていると、真田くんが私のシャープペンを奪い、スコア表にホームランの記号を書きこむ。


「あっ、すみません」

「波多野さんはスコアラーより応援団のほうが向いてるかも」


その通りだ。試合に夢中になってスコアを書くのを忘れてしまう。


「ホントですね。反省しなくちゃ」

「いや、いいんじゃない。俺たち選手は、そうやって真剣に見てもらえるとうれしいよ」
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