ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。
「あの、私はそろそろ」


六回に差しかかった頃、私は立ち上がった。

本当は試合が終わるまで見ているつもりだったけれど、罪悪感に耐えられなくなった。


「もう帰っちゃうのか。残念」

「すみません。勝てるといいですね」


試合は六対五で桜花が一点負けている。

高校野球は最後に大逆転ということもよくあるので、本当は最後まで見たい。


「うん、夏は絶対に甲子園行きたいから勝たないと。あ、旭日はライバルだ」


今の旭日は桜花のライバルにもなれないけど……。


「そう、ですね」

「旭日に、霧島いるよね」

「知ってるんですか?」


思いがけず大河の名前が出て、大きな声が出てしまった。


「うん。リトルリーグ時代、彼はライバルだったから。もっと強いチームに行けばよかったのに。もったいない」


そうだったんだ。
私は大河のことしか見ていなかったから、真田くんと対戦したことがあったなんて気づかなかった。


「彼には彼の考えがあったんです」

「でも、旭日では甲子園は難しいんじゃない?」
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