ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。
ぶっきらぼうだけど、いつもよりゆっくりとしたペースで歩く大河を見ていると、彼の優しさに心がホカホカ温まる。

もっと素直になればいいのに……。


いつものようにふたりから少し離れて後ろをついていくと、「波多野さん」と呼ばれて振り返った。
真田くんだ。


「秋季大会は応援ありがとう。残念ながら二点差で負けちゃって……」


真田くんの声が大河に聞こえているんじゃないかとハラハラする。
試合を見に行ったことを言っていないからだ。


「そうですか。また頑張ってください。それじゃあ……」

「栞」


真田くんから離れようとすると、大河の声がした。
彼は私のほうに近づいてくる。


「霧島じゃないか。久しぶりだな」


すると真田くんが大河に気がついて声をかける。
それなのに大河は返事もせず「行くぞ」と私の腕を強く引く。
< 115 / 152 >

この作品をシェア

pagetop