ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。
本山くんのキャッチャーミットにボールが収まると、本山くんが尻餅をついた。

それは、大河のボールがあまりに速く威力があったからだ。


「ありゃ、百四十キロ超えてるな」


しかもど真ん中のストライク。
打席に立つ二年の先輩はバットすら出なかった。


そして今度はゆっくりとしたカーブで内角に一球。

タイミングをずらされた先輩のバットは宙を舞った。


「カーブもいい」


監督は感嘆のため息を漏らしている。

他の先輩たちも食い入るように大河を見つめている。

そして、あっさり三球三振。
そのあとのふたりも同じ。

ボールがバットをかすることすらなかった。


「霧島、いいぞ」

「ありがとうございます」


大河は監督に褒められている。

本山くんもようやく緊張が解けた様子で笑顔が戻った。


「お前、すごいな」


三年の先輩までもが大河の活躍に目を丸くしている。


「いえ、まだまだです」


一見、謙遜に聞こえるけれど、彼は本気でそう思っていると思う。
< 25 / 152 >

この作品をシェア

pagetop