ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。
その日の帰り道。

自宅近くの駅で大河と合流して、肩を並べて歩き始めた。

大河と話したくてうずうずしている私にとっては、待ちに待った時間だ。

こうして周りに旭日の生徒がいなくなってからでないと、彼はなかなか一緒には歩いてくれない。


「大河、すごかった。ホントよかったよ」


私が興奮気味に話し始めると、彼は「サンキュ」と微笑む。


「あれ、その喜び方、控えめすぎない?」

「喜んでるぞ?」


反論する大河は、わざとらしくニッと笑ってみせた。


「大根役者め」

「そもそも役者じゃねぇし」


でも彼が大喜びしないのは、紅白戦で勝つことが目標ではないからだと、私もわかっていた。


家まであと五分ほどに差しかかったとき、道端で男の子が泣いているのを見つけた。


「どうしたのかな……」

「さぁ?」


私は慌ててその子のところに近づいた。


「迷子かな? お名前言える?」


私が問いかけたものの、男の子が泣き止むことはない。
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