ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。
「栞、弘樹頼んだ」

「えっ? ……うん」


大河は靴を脱ぎ捨て、制服のズボンのすそをまくり上げはじめる。


「大河、取りに行くの?」

「男の約束だからな」


彼は弘樹くんに微笑みかけてから、川に入っていった。

幸い水量も多くはなく流れも緩いので、彼は難なく先を進む。

とはいえ、膝までまくり上げたズボンが濡れてしまうほどの深さはあった。


「ほら、いくぞ」


ボールを無事に手にした彼は、私に向かってポーンと投げる。
私はそれをキャッチして、弘樹くんに差し出した。


「よかったね」

「ありがとう!」

「わっ……」


弘樹くんと会話を交わしていると、背後から大河の慌てたような声がした。

振り向いてみると……彼はどうやら深みに足を取られたらしく、水の中で転んでしまったようだ。


「大河!」

「栞は来るな!」


慌てて駆け寄ろうとしたのに、止められてしまった。
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