ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。
「でも……」

「大丈夫だから」


彼は立ち上がり、戻ってきはじめる。

あぁっ、よかった……。
安堵の胸を撫で下ろした私は、へなへなと座り込んでしまった。

浅くても溺れる可能性があることを知っていたからだ。


やっと大河が戻ってきた頃、「弘樹、どこ!?」という女性の大きな声が聞こえてきた。
お母さんだろう。


「弘樹、お迎えだぞ。いいか、もう二度とひとりで川のそばで遊ぶな。これは俺との約束だ」


大河が言い聞かせると、弘樹くんはうなずいている。

もう懲りたと信じたい。


「ほら、行け。お母さんに心配かけてごめんなさいしろよ」

「うん!」


笑顔に戻った弘樹くんは、お母さんのほうに駆け出していった。


「で、栞。お前はなんで泣いてる?」


大河は、今度は座り込んで泣いてしまった私のところにやってきて、顔をのぞき込む。


「だって、大河が死んじゃったらどうしようって……」


私が言うと、彼はおかしそうに口元を緩める。
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