ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。
「このくらいで死ぬかよ。だいたい、お前を置いて死ぬわけねーだろ」


大河の言葉に、私の心の奥のなにかがコトンと音を立てて動いた。

ホント、に? 

彼は呆然としている私の額にデコピンを食らわせる。


「痛いっ!」

「栞が俺を信じないのが悪い。俺はずっとお前のそばにいるよ」

「大河……」


彼はそう言うと「さすがにちょっと寒い」と体を震わせる。

ずっと、そばにいてくれるの? 
ううん。私、そばにいていいの?


学校ではそっけない彼だけど、こんなことを言われると、うれしくて舞い上がってしまう。


「でも、サンキュ。栞がそんなに心配してくれて、うれしかったよ」


差し出された手を握ると、彼がグイッと引っ張り立たせてくれた。


「もう泣くな。お前に泣かれると弱いんだから」

「……うん」

「風邪ひきそうだから、帰るぞ」


そして私の頬に伝う涙をマメだらけの大きな手で拭ってくれた彼は、カバンを持ち歩きはじめた。
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