ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。
失われる情熱
一年生が練習にも慣れてきた、六月二十八日。

夏の甲子園地方大会の抽選が行われ、旭日高校は強豪私立のいないブロックに入ることができた。


とはいえ、公立校でも旭日高校の何倍もの部員をそろえているところはあるし、いつも私立に迫る勢いの高校もある。その中で一敗もできないというのは過酷だ。


「ひとつずつ勝っていくぞ。まずは一回戦突破が目標だ」


それからすぐに行われたミーティングで監督が発破をかけるものの、三年連続で一回戦敗退という不名誉な記録が皆の顔を曇らせる。


「ほら、今年はいけるわよ。皆、頑張ったでしょ?」


慌てて三年のマネージャーが声を上げたけど、皆は曖昧に笑うだけ。

大河のように甲子園に行きたいという意欲を丸出しにしている部員は他にはおらず、せいぜい本山くんが『もしかしたら』と思っているくらいだ。


「先輩、甲子園に行きましょう」


大河が立ち上がり声をかけたが、「霧島が九人いればなぁ」と言われる始末。
< 32 / 152 >

この作品をシェア

pagetop