ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。
特に今年の一年生に、もうすでにプロも注目しているという噂のすごい選手がいると聞いた。


「そうそう、真田(さなだ)くん。多分一年でも試合に出てくるんだろうな」

「そんなにすごいんですか?」

「うん。霧島くんには驚いたけど、真田くんはもっと上を行くピッチャーみたい。百五十キロ近い球速を出したこともあるし、なによりコントロールが抜群なんだって」


大河もコントロールはいいほうだと思う。
でもまだ肩が出来上がってはいないので、時々抜けてしまうこともある。


「でも、霧島くんは、本気で甲子園に行くつもりだと思います」


私が言うと、綾子先輩は眉間にシワを寄せる。


「霧島くんの気持ちは素晴らしいと思うけど……九人の気持ちがそろわないとね……」


綾子先輩の言いたいことはよくわかる。

いくら大河がひとりで奮闘したところで野球はチームプレーだ。全員がひとつにならなければ勝ち上がってはいけない。


難しいのはわかっている。
でも私は大河を信じていたかった。
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