ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。
強豪校とは違い、夏の大会を三年生の集大成と考える監督が、三年生をメインで使うのは旭日ではあたり前のことらしく、それを彼も知っていたのかもしれない。


「私だけか……」


こんなに落ち込んでいるのは、私だけなのかな。

だって夏の甲子園は、たった三回しかチャンスがないんだよ?

その貴重な一回に出られないかもしれないのに……。
実力重視なら、大河が出られるチャンスは大きかったはずなのに。


「それじゃあな」


別の方向の電車に乗る部員たちと別れ、大河は反対方向のホームに向かった。
もちろん、私も。


本山くんともうひとりの野球部の仲間が電車に乗っていってしまうと、それまで笑顔だった大河の表情が曇りはじめた。

やっぱり、無理して笑っていたのかな……。

少し離れたところから彼の様子をじっと見つめていたけれど、近づくことはできなかった。

まだ他の生徒がたくさんいるので、彼がイヤがると思ったからだ。
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