ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。
それから五分ほどしてやって来た電車に乗り込む。

同じ車両に乗ったものの、大河はその車両の一番うしろ。
そして、私は一番前。

吊革を持ち目を閉じた彼は、なにを考えているんだろう。


小さな頃からずっと一緒だったけれど、こんなに複雑な顔をしているところを見たのは初めてだった。

大河はうれしいときは口を大きく開けて笑い、悔しいときはわなわなと拳を震わせ、つらいときは唇を強く噛みしめるような、感情をストレートに出す男の子だった。

でも、今彼がなにを考えているのかわからない。


それから二十分。
ずっと彼のことを盗み見ていた。

家の最寄りの駅に着くと、大河はやっと私に視線を送った。

いつものことだけど、彼は私が近くにいるのを知っているのだ。


電車を降り、改札を出るところで大河は待っていてくれる。

同じ学校の生徒がいるところでは決して近づこうとしないのに、男の子って不思議だ。
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