ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。
「そういえば、宿題やってないな」


大河は白々しくつぶやく。


「なにが言いたいの?」

「誰かやってないかなと思って」


素直に『見せて』と言わないのが彼らしいといえば彼らしいけど、毎日これだから呆れている。
まあ、頼られるのはうれしいんだけど。


「勉強しないと知らないよ?」

「だってさ、練習疲れるんだぜ。そうしたら眠くなるだろ?」


もちろん授業が終わったあとも部活。
そして帰ってからも自主練を欠かさない彼がヘトヘトなのはわかるけど、高校に入って勉強の量もぐんと増えているからちょっと心配だ。


「もー、仕方ないな」


私は宿題の英語のノートをカバンから取り出して彼に差し出す。


「サンキュ。授業までには返すから」


彼が私のノートを受け取るとき、指と指が触れてしまい、慌てて手をひっこめた。

いちいちこんなことでドキドキしてしたら心臓が持ちそうにない。
でも、好きなんだから仕方ない。


「明日はやってきなさい……」

「しーっ」
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