ずっとずっと、キミとあの夏をおぼえてる。
つまり、“勉強より野球で成果を出せよ”という暗黙の了解があり、野球に専念するのには最高の環境だった。

もちろん、成績優秀で文武両道という選手もいるのだけれど。


大河ももしかして桜花高校に行くのでは……と思っていたが、残念ながら声はかからなかった。

というのも、彼の所属していたリトルリーグは決して強いチームではなく、大河ひとりずば抜けていても、なかなか全国には手が届かなかったからだ。

強い選手は別のチームに移っていくことが多かった。
でも、そうなると練習に行くのにも両親の送迎が必要になる。

彼はいつも忙しい両親に遠慮して、移籍したいとは言わなかった。
それ故、注目されることがなかったのだ。


ちゃんと彼の成績を見てくれれば、桜花高校の選手に劣らないのに……。


自分から推薦入試を受けに行くという手もあったけれど、彼はそれをしなかった。

それは、学校側から声がかかると学費の半分が免除という制度があるのに対し、こちらから受験するとまるまる学費がかかるということも関係しているのではないかと思っている。

大河なりに両親に気を遣ったはずだ。
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