転生先がアーサー王だなんてあり?
永遠の結婚式前夜
プロローグ
ここまでよくやってきたよ。
学校に行けば、毎日毎日殴られ蹴られいじめられ、抵抗しようとすれば何十人という人間に罵られるのだ。
先生に訴えても見てみぬふりを決め込むだけ。
唯一の頼み綱だった母親は酒に溺れ、男と遊びまくっては家に帰ってくるのは結局朝方になる。
もう、オレが死んでも悲しむ奴なんてこの世にいるわけねえよな?
なら最後に一矢を報いたいではないか。
それができるのはオレ自らが書き記した最後の遺書である。遺書に今まであったことの真実を全て紙に書き記してやる。
いじめられていたとなればマスコミは黙ってはいられないだろう。
いじめてきた奴ら、見てみぬふりを決め込んできた奴ら、オレのSOSを無視してきた奴ら。
皆、みーんな、世界中の人間に忌み嫌われオレが味わってきた屈辱、孤独感を直接肌で感じろ。
それがオレの最後の復讐だ。
もしその孤独感に耐えられなくなり、死んで逃げようならば先に逝ったオレが呪ってやる、覚えてろ。
ヒュオっと冷たい風が肌をすり抜ける。
おぉ、屋上高ぇ。オレこんな高い場所から飛び降りるの初めてだわ。
いや、まぁ屋上から飛び降りる経験をした奴がいたら逆にすごいけど。
もう心残りはない。
進○の巨人の漫画の続き見たかったけど。
ま、生まれ変わりでもしたらまた買えばいいさ。
それまでの辛抱だ。
ジリ…と右足を前へ持っていく。
オレの18年という短い人生よ、今日でその日々はお終いだ。おめでとう。
あ、それと神様。
生まれ変わるならオレを大切にしてくれる人間がたくさんいるとこに転生させてください。
金持ちとか恋人とかイケメンとか、そんな欲望は言わないのでよろしくお願いします。
では、オレはこれにて、さようなら諸君。
オレは左足を宙へ投げうった。
うお、空を飛ぶ感覚。妙に世界がゆっくり動いてるように見えるよ。
走馬灯ってやつか?
まぁ、そんなことどうでもいいや。もう、何もかもどうでもいい。
最後、オレは色んな絶望感に心を押しつぶされながら自分の命が喪失する感覚を得た。
地面に到着する瞬間、グチャって生々しい音が聞こえてきたけど。
ま、これでオレは晴れて自由の身だ。あの世で祝杯を上げようじゃないか。
かんぱーい。
「あ、あの大丈夫すか?」
先程の学校とはうって変わり。
オレは煉瓦造りのメルヘンチックな街のど真ん中に倒れていた。
しかも目の前には青髪の、いかにもイケメンと比喩できそうな顔たちの美少年が。
え、え?ココどこ?何故にオレはこんなとこに倒れていたんだ?この青髪少年は誰だ?今の時代青髪ってイタすぎね?つかここは可愛い美少女が「起きて!」って声掛けてくれるとこじゃねぇの?
周りを見渡す。
魔法使いのような格好をする者、鎧を着ているいかつい大男、猫耳を生やしてぴょんぴょん飛び跳ねる小さい女の子……。
……え、猫耳?ね…猫!?えぇ!?
「あ、すみません。こ、ここどこだか分かりますか?」
オレは目の前にいる青髪美少年に率直な質問を問う。
「はぁ?あんた場所も分からず倒れてたのか?東から砂漠超えでもしてきたんか?」
「え、あ、はい。」
あ、テキトーに答えちゃった。
ま、下手に変な回答でもして怪しまれるのも嫌だからな。今は東から砂漠超えしました設定でいこう、うん。よく分からんけど。
え、あれ?何かすっごく憐れみの目で見られてる。
「無謀なことする人なんよ…。」
「はは…。」
「よくこんなとこまで生きてこれたな。」
「こんなとこ?」
「あぁ。あんたがここに来る前にいた場所ってこっからずっとずっーーーーと西にある国だろ?」
最後疑問で返されると何て返せばいいか分からないから困るんですけど。とりあえずテキトーうんと相槌でも打っとこう。
「んで、ココは結局どこなんすか?」
「ん?あーここ?ここは___
アーサー王大国、キャメロット王国の商い通り…まぁ王都に当たる場所かな?」
ん?アーサー王?アーサー王ってあのアーサー王?
ケルト神話が何とかって言う?
え、ウソ…。
「えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」
その日、街にオレの叫び声が響き渡ったと言う。