彼女が消えるその瞬間まで
「…………と、まぁ昔あったんだよ」




話し終えると、彼女は泣いていた。



俺の話に情が入ったのか、それともただの同情かは分からないが。




彼女は俺の手を取り、あの透き通った目を俺に向けた。




頬からは、一雫が滑り落ちた。





「辛かったんだね、翼くん。大好きなピアノを諦めて…こ、こんなことになって…



私が泣くのはお門違いだけど、ごめんね……涙、止まんないや」



彼女の涙が、病院のベッドを濡らしていく。


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