彼女が消えるその瞬間まで
「翼くん」



固まっていた彼女は、回りに訊こえないように、俺に耳打ちしてきた。



「私が消える前に、翼くんと家で遊びたいの」



はっとして彼女を見つめると、姫百合はさっきのニヤニヤとは違う。
寂しそうに、どこか遠くを見るように笑っていた。




……悪いことしたかな。まぁ、今日くらい仕方ないか。




「分かった。放課後、君ん家に行くよ。俺もどうせ暇だし」




「本当!?約束だよっ」





彼女はそうやってひとことだけ言うと、友達の元へ走っていった。




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