直感的結婚~恋はこれから~
だけど、踏み出せずにいても時間だけが過ぎていくだけで進まないから決心した。

美琴、腹を括るんだ!と自分に言い聞かせた。過程はどうであれ行き着くところは同じなのだから。

念入りに洗い終わり、ゆったりと入ろうとするところで声が掛かり、ゆったり気分になれなかった。

ドキドキしながら待っていると、微かに入る冷たい空気でドアが開かれて泰士さんが入ってくる気配を感じた。


「背中しか見えないのは寂しいんだけどね」

「今は背中だけで我慢してください」


いきなりどーんと見せられるほどの勇気はない。背中を見られていると思うだけでも心臓は大暴れしているというのに、彼は笑う。


「まあ、すぐに全部見るし……うわっ、おっと!」

「えっ? 大丈夫ですか! 泡が残っていたかも……きゃっ! わわっ!」


泰士さんの慌てる声に私は振り向いて、思わず立ち上がった。急いでバスタブに入ったから、泡をちゃんと流していなかったようで、彼が足を滑らせてしまう。
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