直感的結婚~恋はこれから~
手首を捕まれてしまい、動けなかった。私の動きは見透かされていた。


「困ります。離してください」

「イヤだよ、離したら逃げるだろ? やっと……あ、ちょっと待って。はい……あ、悪い。すぐ行くよ」


彼のズボンのポケットに入っていたスマホが鳴った。通話を終えた彼の目はまたもや私を捉える。

かっこいい人に見つめられて、不覚にも私の胸の鼓動は早くなる。危険人物だと思うのに。


「とりあえず、今無職なら時間はあるよね? 一緒に来て」


今度は手を繋がれて、強制連行。長い足で歩く彼に短い足の私は小走りでついていく。

途中、もつれて転びそうになったが、彼が受け止めてくれた。その時の至近距離に私の顔色はよくなったはず。


「ただいま」

「遅いよ。まだ来てないからいいけどさ……って、その人誰?」

「嫁にする人?」

「は? 嫁? 何言ってるんだよ」


連れてこられた場所はたくさんのオフィスが入っているビルで、その三階にある会社。

突然現れた女を嫁だと説明したら、誰だって驚く。私もまだ驚いている。あんなプロポーズもされたし。
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