直感的結婚~恋はこれから~
「今日も空気が澄んでいるからきれいに見えるな。うん、良かったな」

「はい!」


シャンパンとアペタイザーがテーブルに置かれた。

なんのために来たのかは全然見当がつかない。ただ夜景を見るためではないとは思うけれど。

泰士さんがグラスを持つのに合わせて持つが、何に乾杯するのだろうと彼をじっと見つめた。彼は「そうだな」と外に視線を向けてから、また私を見た。


「幸せになれるよう願って乾杯しようか?」

「私たちがですか?」

「もちろん」


幸せな結婚式に参加して幸せのお裾分けをしてもらった気分でいたけれど、願うのはやっぱり自分たちの幸せ。幸せになれるといいけれど、まだ未来が見えてこない。

でも、願えば見えてくるかな。

乾杯して、グラスをテーブルに戻すとテーブル中央に小さな赤い箱が置かれる。


「出来上がったよ」と泰士さんがそれを開けるとそこには二つのマリッジリングが並んでいた。

結婚式の日に間に合わなかったからとまだ指輪交換をしていない。私は何もない左手の薬指を見た。

そうか、このためにここへ来たんだ。

わさわざここでなくても家でも良かったのに。
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