キミを奪いたい



けど、それよりも脳裏に焼きついているのは、前髪の隙間から覗くリョウの冷めた双眸で。



思いっきり手を振り払われたあのとき、CLUBの光を背にしていたからハッキリとは見えなかったけど、前髪の隙間からかすかに見えた双眸は確かに私を拒絶していた。




あの光景を思い出すだけで胸の奥がキリキリと悲鳴を上げる。



あの冷たい瞳を見るのは初めてじゃない。二度目だ。



一度目はあの時───、


リョウに別れを告げた、あの時。




あの時のリョウの瞳も冷たかった。


なにもかもどうでもいいような、なにも映していない瞳。



別れる前のリョウとは全然違う。

出逢った頃はあんな冷めた瞳してなかった。



リョウがあんな風になってしまったのは、きっと私のせい。


私が緋月のことを隠してたから。

リョウの気持ちを無視して一方的に別れを告げたから。


リョウを、傷つけてしまったから。



だから、どんなに冷たく拒絶されたとしても、私はそれを受け止めなきゃいけない。



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