キミを奪いたい
あと10分ぐらいはゆっくりできるかな。
と、スマホで時間を確認し、どこか座るベンチはないかと足を一歩踏み出したとき。
「っ、あ、すみません……!」
背後から人が歩いて来ているのに気付かなくて、軽くだけどその人にぶつかってしまった。
「大丈夫ですか!?」
少しよろけたその人を慌てて支え、大丈夫か確かめるために覗き込む。
「こちらこそごめんなさいね。ちゃんと前見てなくて」
「い、いえ、こちらこそごめんなさい!」
目が合ったとたん、ドキッと胸が高鳴った。
綺麗な人だからっていうのももちろんあるだろうけど、この感じはそんなんじゃなくて……
「────あやの?」
そう。なんとなく似てるんだ。
“リョウ”に。