キミを奪いたい
「……」
俯いてしまった私を見て、女性は何かを察したのだろう。
ただ私を見つめているだけで、何も言ってはこない。
三人の間に流れた微妙な沈黙にいたたまれなくなった私は、
「し、失礼します」
軽く頭を下げて、その場から立ち去ろうと足を踏み出した。
そして、ちょうどリョウの横を通り過ぎようとしたとき、無意識に顔を上げてしまった私。
上げてすぐに後悔した。
だって、もしリョウと目が合ったら、またこの前みたいな冷たい瞳で見下ろされるかもしれない。
そう気づいたときにはもう遅くて。
「っ、」
顔を上げた瞬間、リョウと目が合ってしまった。