キミを奪いたい
今、私のこと見てたよね……?
────ほんの、一瞬だった。
本当に一瞬だけだった。
目が合った瞬間逸らされてしまったけど、確かにリョウと目が合った。
「……っ、はぁ……」
建物に入って、人気のないところまで移動する。
そして、ドキドキと高鳴る胸を押さえながら、そっとその場に腰を下ろした。
「び、っくりしたぁ……」
しゃがんだ瞬間口からつい出たのは、そんな言葉。
というか、今はもうそんな言葉しか出てきそうにない。
とにかく落ち着かなきゃと、目をつむって何度も深呼吸を繰り返した。
「ふぅ……」
なんとか息は整えられたけど、波打つ鼓動はなかなか収まらなくて。
「わっ!」
ようやく落ち着いてきたと思ったら、今度は突然鳴ったスマホの着信音にまた心臓が飛び跳ねた。