キミを奪いたい
リョウも私が目の前現れるなんて思っていなかっただろうから、つい呼んでしまっただけかもしれない。
───でも、それでも。
たとえ、つい呼んでしまっただけだとしても、リョウの口から自分の名前が出たことが単純に嬉しかった。
だって、もう呼ばれることなんてないと思ってたから。
もちろん、喜べる立場じゃないってことぐらい分かってる。
私は緋月に二人の関係を隠したまま一方的にリョウを振ってしまった。
そんな私が前みたいにリョウに呼んでほしいなんて───他の女の子と遊ばないでほしいなんて、
そんな都合のいいこと言えるわけがない。
本当に自分勝手で嫌になる。
早く、忘れなきゃ……
そう思っているのに、神様は残酷で。
まるで忘れるなとでも言うように、私の心にさらに追い打ちをかけてきた。